国家知識産権局が本年9月に公表した1~8月の知的財産統計短信によると、特許出願件数95.2万件(前年同期87.9万件)、実用新案出願件数は182.2万件(前年同期140.1万件)、意匠出願件数48.0万件(前年同期46.6万件)である。
新型コロナウイルスの影響下にもかかわらず、いずれも昨年同期のデータから大幅に伸長している。専利出願件数のデータのうち特に実用新案出願件数の伸びは顕著であり、2020年の総出願件数は昨年2019年の出願件数226.8万件を大幅に上回る見通しである。
【コメント】
中国の実用新案制度は、日本と同じくライフサイクルが短い物の構造等に関する小発明に適する。しかしながら、中国実用新案制度は、上述のように、日本実用新案制度に比べ、進歩性要件の判断における創作性レベルが実質的に低く、技術評価書など権利行使を行う場合の制限も特に存在しない。従って、技術水準が低い小発明を効率良く保護することのみならず、コア技術の保護にも有効に活用できる。 中国実用新案制度は、存続期間が短い以外は特許とおおむね同じ効力を有し、早期権利化が可能であり、対象技術の実質的保護期間の長期化が可能である。すなわち、コア技術の保護において、特許出願に加え実用新案出願も同時提出できる併願制度を利用することにより、コア技術に対する長期保護及び広範の保護が実現できる。また、実用新案権に基づく権利行使の成功例も多い。そして中国の知的財産政策の強化やAI技術による調査技術の発達により、実用新案権の品質が向上する可能性もあるとみられる。近年はインターネット裁判所やブロックチェーン技術の導入が既に始まり、中国における権利行使の効率化もますます進んでいる。これらの発展や利点は、日本の出願人も十分に利用することができる。うまく活用することで、より確実で効率のよい知的財産権の保護が実現できると考える。